クライアント業種 : 化学製品製造業
期間:スポット(1ヶ月超)
前号の「早期退職に関するご相談①」の続きです。
早期退職に係るA氏の経費控除は以下2つの経費控除が考えられます。
(1) 解雇補償金に係る経費控除・・・最大300,000バーツまで
定年まで勤めた場合や会社都合で従業員を解雇した場合に支払われる解雇補償金に対する経費控除です。ただし、本件では双方が合意に至ったため、労働保護法上の解雇とならず、利用できません(参照:1966年商務省省令No.126)。
(2) 退職金に係る経費控除
a. 退職金と最終の月額給与に勤続年数を乗じた金額のいずれか低い金額
b. 勤続年数×7,000バーツ※1
(a. – (b.×7,000))×50%=経費控除額
となります。歳入局ホームページでは、退職に伴う所得に関する税務解説を公開しており、早期退職に関する計算サンプルも掲載しておりますので、文末のリンクの28-29,44ページをご参照下さい。
簡易日本語訳は下記のとおりです。
----------------------------
例題3: S氏は銀行に30年間勤続しており、早期退職制度に合意した。彼は2011年12月1日に退職し、最終の月額給与は86,000バーツであった。雇用主は年金基金への拠出金980,000バーツ、特別退職金1,950,000バーツ、退職金(労働保護法上の解雇補償金見合いの金額)890,000バーツを支払った。S氏は退職後年金を毎月65,000バーツ受領することになった。
計算方法
1. 雇用主からの報酬
1.1 年金基金への拠出(980,000-200,000) = 780,000
1.2 特別退職金 = 1,950,000
1.3 退職金※2 = 890,00
合計 = 3,620,000
2. 最終の月額給与 = 86,000
3. 退職金と最終の月額給与に勤続年数を乗じた金額の比較
3,620,000 > 2,580,000
4. 前項の金額のうち低い金額を算定のベース金額とする = 2,580,000
5. 経費控除
第1段階 (3,500※1 × 30) = 105,000
第2段階 (2,580,000-105,000) x 50% = 1,237,500
合計(105,000 + 1,237,500) = 1,342,500
6. 経費控除後の課税所得 = 2,277,500
7. 前項の課税所得から算定される個人所得税額※2 = 528,250
注記
銀行に勤務していた者が受領する1966年商務省省令No.126第2条(73)に定める年金の拠出については、200,000バーツまでは課税所得から控除するものする。早期退職に係る雇用主による200,000バーツを超える年金の支出に関しては、1991年9月24日付歳入局長官通達No.45第1条(Ngor)により、一時支給金と見做され個人所得税申告書別表のKor 第5項に含める必要がある。
300日分の給与を超えないとされる退職金については300,000バーツまでは免税である。しかし、本件の場合S氏は早期退職制度に合意したため、解雇補償金に該当する890,000バーツの退職金は1991年9月24日付歳入局長官通達No.45第1条(Ngor)により、雇用主による一時支給金の支払いとされるためこの免税を適用することはできない。
年金基金への拠出およびその後受領する年金の金額が200,000バーツを超える場合、経費控除は3,500バーツ×勤続年数とし、それは課税所得を超えないものとする。
年金基金への拠出額は、歳入法典第48条(1)および(2)に基づき課税所得に含まれ個人所得税申告書PND90またはPND91書式で申告しなければならない。
----------------------------
※1 すべて一時支給金として支払われる場合の経費控除は7,000バーツですが、一部分が一時支給金として支払われ、他部分につき年金として支払われる場合は、その一時支給金についてのみ、雇用牛が退職を理由に一括して支払う金額と推定し、経費控除は3,500バーツに減額されます(歳入法典第48条(5))。
※2 本計算例が公示された2012年5月現在の法令上の計算に基づいています。現在では金額が改正されています。
関連するリンク先
商務省省令No.126 https://www.rd.go.th/publish/2502.0.html
歳入局長官通達No.45 https://www.rd.go.th/publish/3213.0.html
退職に伴う所得に関する税務解説
http://www.rd.go.th/fileadmin/download/leave_of_work.pdf